だいこく噺 第九回 「プロゲーマーになるまで」

今回はストVのプロゲーマーになるまでの経緯を書いていこうと思います。
前回書いたとおり、「ウルトラストリートファイターⅣ」(以下、ウル4)の後期で過去最高のやり込みを続けたこともあって、格闘ゲームで1番になってやるという強い意気込みで望んでました。その気持ちもあって、最新作「ストリートファイターV」(以下、ストV)では、スタートダッシュを切って絶対注目されようと目論んでいました。
【BACK NUMBER】
- 第一回「働くという事」
- 第二回「フランス遠征」
- 第三回「EVO噺」
- 第四回「台湾噺」
- 第五回「TGS2018噺」
- 第六回「配信者として」
- 第七回「プロ格闘ゲーマーが挑むデジタルTCGの世界」
- 第八回「格闘ゲームとの出会い」
今すぐ勝てるキャラクターをチョイス
まずやることは、スタートダッシュを切ることなので、今すぐ勝てるキャラを探しました。発売してすぐだからこそ、相手が知らない連携や対応しづらい技で勝つという視点です。
見た目で使いたくないキャラから確かめようと思い、最初に触ったキャラクターがバーディーでした。ファーストタッチでこのキャラは”狩れる”と確信したので、ランクを上げることに。

近づくことができれば崩しが豊富なバーディー
作戦は大成功!ゲーム発売当初から高ランクへ行くこともでき、ウル4時代には勝てなかった人達に連勝することもできました。周りからは「あのだいこくが勝てるゲームとか(笑)」「ブッパだけ(笑)」と言われ続けていましたが、ひたすら練習に励みました。
強いやつが正義だと思っているので、批判されながらも高ランクへ行けたことはとても心地良かったです。
ストVで初の大会参戦、そして炎上を体験
そして、ストVで3on3大会Tokyo Offline Party2が開かれました。ウル4時代からともにやってきた「unsung、そぼろんぐ」とチームを組み、負けるわけがないという気持ちで大会へ。
プール決勝まではすんなりと勝ち上がれました。しかし、プール決勝での対戦相手は藤村さんのチーム。ウル4時代によく負けていたこともあり、藤村さんが強いのは承知の上でしたが、タイトルがストVに変わったので負けるはずがないという思いが強かったです。
結果は藤村さんに3タテをされ終了。どこで差が付いているのかが理解できないほど、実力差があり「今までの努力は意味なかったのか…」と落ち込んだのを覚えています。
家に帰っても気持ちは晴れず「練習しても勝てないのでは意味がない」という、やりきれない気持ちをぶつけるため、あるブログを書きました。内容は「負けたのは環境が悪いせい。プロたちがオフラインで練習しているのだったら勝てるわけない。人に媚びてまで強くなりたくない。」と。
案の定ブログは炎上し、ネットで総叩きをされることに。炎上中、環境が悪いと駄々をこねていた自分に対し藤村さんが「平和島に対戦しに来てみるか」と誘ってくれたのです。
手を差し伸べてくれた藤村さんには感謝しかありません。だからこそ藤村さんや平和島の方々に会って謝罪をしたかった。そして、オフライン対戦をやり続けている環境に飛び込んで自分の力を試したいと思い、平和島に向かう決意を固めました。

プロゲーマーMOV氏が大家をしている格ゲーマー御用達のアパート。過去には、藤村氏やえいた氏などのプロゲーマーも暮らしていた。
平和島につくや否や、迷惑をかけてしまった事を謝罪して回りました。その後練習をさせてもらい、今までどれだけ目先のことだけに囚われていたのかと思い知らされました。
打ちひしがれていると、藤村さんに「環境の話は間違いじゃない。練習の質に差はあるけど僕はその環境に身を置けるようにがんばった。だけどお前はやってなかったでしょ。」と言われ、何も言い返すことはできませんでした。
今まで自分の努力は最高のものだと思っていましたが、更に努力できる事、強くなるための方法がある事を教えてもらいました。
平和島へ行ってからは、今までとは違うやり方で努力する事になります。まず変えた事はオフライン対戦に行って練習する事でした。
そこから何度も平和島やe-sports squareで練習し、格段に強くなりました。いつも藤村さんやVXさん、金デヴさんが厳しくも優しいアドバイスをくれ、より一層対戦が楽しくなりました。
唯一の心残りは、多くの方のお世話になったにも関わらず、その期待に一切答えられなかったことです。
初海外で本場の熱狂を初体験
えいたさんをはじめとする、さまざまな選手たちの話を聞き、自分も海外に行き実力を試してみたいと思う機会が増えてきました。金銭的な面を見た時に、実現可能性が高そうな大会がカナダカップであったため、この大会に照準を合わせて準備を行っていくことに。
これが初海外遠征となりました。
初海外にも関わらず、一人旅だったので不安で仕方がなかったのですが、他の日本人選手とホテルへ到着。ホテルに着いてからは藤村さんをはじめとする日本人プレイヤーたちと合流し、初海外を満喫しました。
大会が始まると、「ここで負けたら今まで働いた分のお金も今までの努力の成果も、なにも残らない」と考えていたせいもあり、緊張で動けなくなってしまうというハプニング。そのハプニングから助けてくれたのは日本からの声援でした。TwitterやLINEで色んな方達から応援のメッセージをいただき、その応援のおかげでプールを突破することができましたね。
プールを突破した後はカナダカップ恒例である、国別5on5が開催され、「ヌキさん、ボンちゃんさん、藤村さん、ジョンくん、だいこく」という最高のチームで出場しました。
アウェイではありましたが、チームみんなで声を出して応援して勝ち進むという経験は味わったことがありませんでした。Team USAに決勝で負けてしまいましたが、彼らとチームを組ませてもらえたことは今でも誇りに思っています。
大会後は親交を深めるためにみんなでご飯へ。いろいろなアドバイスを貰ったり、「海外に来るなんてやる気あるな!」とさまざまな人に褒めてもらったり海外に来て本当によかったと心から思いました。
夜が明け、大会2日目
初日で緊張は取れたので、あとはやってきたことを全部ぶつけてみようと挑みました。吹っ切れたことで、出だしはとても好調。自分の理想通りの動きを取ることができ、見事ベスト16まで勝ち上がることができました。
試合が終わって壇上を降りると観客の方々からすごい歓声があがり、これが勝つということなのかと感動しました。こういった盛り上がりは海外ならではの体験なので、海外へ行った事ないプレイヤーは是非行って味わって欲しいと思います。
次はベスト8をかける試合で中国の強豪Xiaohaiと対戦します。この試合は思い出したくもないくらいに完封負けをしました。
まだウィナーズだったのですが席に戻ってずっと泣いていたのを覚えています。ルーザーズが残っているのにも関わらず泣いていた自分に対し、藤村さんが「まだあるんだから泣いている場合じゃない」と励ましてくれたことがきっかけで、どうにか切り替えることできました。
さあ次の相手は誰だとトーナメント表を見ると、対戦相手はウメハラさん。世界で戦うという気持ちを持った自分に嘘はつきたくないと、一念発起して試合に臨みましたが1-2で負けカナダカップが終了しました。
内容は前のめりに攻めすぎた結果、途中からそれに対応された形でした。試合終了後、ウメハラさんから「強かったね」という言葉をもらったことを、今でも鮮明に思い出します。壇上を降りると「勝ちたかった。勝ってお世話になった人たちに結果を見せたかった」という感情があふれ、涙が止まりませんでした。
その後、アフターパーティーに参加し、ライバル視していた韓国のバーディー使いXyzzyさんをはじめとする、さまざまな海外プレイヤーと交流することができ、最高の形で初の海外参戦を終えることができました。
運命を変えるDMが届く
日本に帰ると今まで練習してきたみなさんから褒めてもらえ、その後の練習にも身が入り、大きな成長ができたと思います。それからしばらくするとアカホシさんから運命のダイレクトメッセージが届きます。
指喧に入って海外で戦ってみないかという旨のダイレクトメッセージでした。以前、指喧に出演させてもらったことがあり人柄を知っていたので、この人にならすべてを任せられると判断し、お願いに伺いました。ダイレクトメッセージの後、指喧メンバーのみなさんと沢山の事をお話させてもらい、晴れてプロゲーマーになりました。
プロになってから、いろいろな事を学びましたが今回の話はここまで。思い返すといろいろな出来事があり、今の自分があるのだと痛感します。今後も自分には様々な試練が起こると思いますが、初心を忘れずに活動していこうと思います。
みなさんに何を伝えたいかというと、自分のような人間でも真剣に向き合い続ければ変われるということです。もちろん、多くの方々に助けていただいて今があります。人の縁が導いてくれることは多いでしょう。多くの人に対して感謝を忘れずに過ごしていく必要があります。
これからプロを目指すプレイヤー達の手助けになることができたら本望です。
だいこく:ウェルプレイド所属のプロゲーマー。強気な攻めと大舞台でも萎縮しない強靭なメンタルで戦うプレイヤー。豊富な実戦経験から繰り出される一撃で数々の強豪プレイヤーを沈めている。
名前:だいこく
Twitter:daikoku_GO
Openrec:WP|だいこく
Blog:配信者だいこくのブログ
大会実績(一部抜粋)
2017年 ThaigerUppercut Championship 2017 7位
2017年 Manila Cup 2017 9位
2017年 TWFighter Major 2017 5位
2018年 ストリートファイターV ARCADE EDITION 闘会議GP大会 9位
■成長を続ける男、「ストV」トッププレイヤー“だいこく”に迫る

Capcom Cupに出場するため、そして優勝するために海外大会を遠征している猛者がいる。その名も「だいこく」。ストリートファイターVにおいてトッププレイヤーであり、強気な攻めと大舞台でも萎縮しない強いメンタルで強豪プレイヤーたちと日々戦っている。