結成半年、CoD:WWIIで日本一に輝いたLibalent Vertex【後編】

長戸勲
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さらなる高みを目指すため、改善点などぶっちゃけトーク

――:少し話は変わりますが、他のFPS作品ではなく、なぜCoDを選んだのでしょうか?

ニコチャン:
僕はCoDからFPSを始めて、ずっとシリーズをプレイしていました。一時期PCのFPSタイトルに移行していましたが、やはり知り合いの数がCoDのほうが多いこともあり、1年ほどで戻った感じです。

実はそのタイミングで日本初プロチームが結成され、それを知ったときには勝手にキレてましたね。「俺が居ない間に何をやってんだ!」って(笑)。当時はプロチームが1チームしかなかったので、「じゃあ、俺がそのチームを潰すわ」という血気盛んな感じで始めたのが、プロチームに入ったキッカケでしたね。

CoDの魅力という部分では、やはり他の作品と比べてスピード感がある。その上で、撃ち合いにも特化している。このスピード感と撃ち合いをどちらも楽しめるのが良いところだと思います。また、見ていても楽しい作品なのかなと。

シチメンチョウ:
自分もCoDからFPSを始めて、段々と上達していく中で”本気で敵と戦う経験”が得られました。表現の仕方が難しいですが、”戦う場がCoDにあった”という感覚です。だから、そのフィールドで勝ってやろう思い、大会などに出ていた感じですね。

esportsルールに関しては、一度とある大会でプレイさせて頂いたのがキッカケでした。やがて、現在のチームからお誘いを受けて、世界に行けるならやってやろうと思い、現在に至ります。

ゲームの魅力の部分では、CoDはポジション取りをしっかりしていれば勝てるところです。また、スライディングやジャンブなどを駆使して勝つFPSは、なかなかないとも思います。

イナバ:
僕はもともとPCのFPS作品をメインにプレイしていました。あるとき、PS3でFPSを遊びたいなと思っていると、僕の好きな実況者さんがCoDをプレイしていたんです。そこで「面白そう! 俺もやろう!」となったキッカケでした。

魅力としては、ほかのFPSにはあまりないスコアストリーク(※)の機能ですね。連続キルを重ねて、大型ストリークを出す爽快感がたまりません。

※:連続で敵を倒すなどして獲得したスコアに応じて発動できる特殊な攻撃手段。

――:PCからFPSを始めたイナバさんですが、実際にCoDに触れたときはどう感じました。

イナバ:
武器の反動が思ったより少ないなと。あと、リコイル(銃のブレ)制御よりも、エイムが重要だなとも思いました。銃のブレ方自体は完全にランダムですが、その分反動が小さくて扱いやすいですね。

――:esports大会で実施されたゲームルールのうち、なにか1つ攻略法を教えてください。

ニコチャン:
じゃあ、「ハードポイント」(※指定されたエリア[ハードポイント]を長く確保することを目的としたルール)を。esportsで本当に勝ちに行くなら、やはりポイントに近いところでリスポーン(※復活ポイント)させるために調整する人がほしいです。

その人がいないと、もし倒されたときは長い距離を走ってポイントまで戻らなくてはいけない。つまり、ポイントの制圧力が格段に落ち、相手のポイントが加算されてしまう。そうならないために、すぐポイントに向かうのではなくリスポーン地点を意識して走ることが重要ですね。

シチメンチョウ:
ニコチャンさんが言ったように、リスポーンを意識すること。あと、ポイントは時間ごとに場所が変わるので、初心者の方はその順番を覚えると良いと思います。次のポイントを意識しながらプレイすると勝ちやすくなると思います。

イナバ:
そうですね……。全部言われちゃいました。

一同:
(笑)

――:完全に決め台詞になっていますね(笑)。2018年10月12日には、シリーズ最新作「コール オブ デューティ ブラックオプス4」(以下、CoD:BO4)が発売されました。まだ発売から間もないですが、遊んでみていかがですか。

※CoD:BO4:2018年10月12日に発売されたPlayStation 4、Xbox One、PC対応のCoDシリーズ最新作。マルチプレイでは、従来の現実的でスリリングな戦闘はそのままに、個人の選択肢を増やした戦術の幅が広がった。

ニコチャン:
遊んでみた感想は、走っている速度やジャンプ撃ちの感覚など、全体的にスピード感があっていいですね。また、体力も増えている印象ですが、その分、これまでのシリーズとは異なる立ち回りができるのも新鮮です。当然、相手の体力も増えているため、1人で相手を倒すのも難度が高くなり、よりチームとしての連携力が求められるようになったと感じます。

――:シリーズが変わるごとに、練習方法も変わりますか。

ニコチャン:
普通に遊ぶ分には、あまり変わらないですね。ただ、esportsルールに関しては、ちょっと変わってきます。たとえば、先ほどもお話したハードポイントでは、リスポーンを抑えるというのが非常に大切なアクションとなりますが、シリーズによってはリスポーンの位置や条件が異なる場合があります。そのときは、該当シリーズの仕様に合わせていく必要はあるのかなと思います。

――:分かりました。次は、チームメンバーに対して改善して欲しいことはありますか? まずニコチャンさんに向けて。

イナバ:
あまりコロカントクとエンカウントをいじめないでやってください……かな。もちろん、指導の一環ですが。エンカウントはメンタルが鋼なのでいいですけど、コロカントクは半泣きですよ(笑)。でも、アメとムチじゃないですが、コロカントクをたまに褒めると、めちゃくちゃ調子に乗るんですよね。

シチメンチョウ:
普段はめちゃくちゃ良い人なんですけど、やっぱり試合中は強く当たっちゃうところがあります。それは理想が高いからだと思いますが、もう少し言い方を優しく……。

――:鬼軍曹の面が出てくるわけですね。

ニコチャン:
まぁまぁまぁまぁ。わりと有名な話ですので。

――:次に、シチメンチョウさんへ向けてはいかがでしょう。

ニコチャン:
シチメンチョウさんには表立って言う不満はないですね。強いて言うなら……う~ん、探すほうが難しいです。

イナバ:
僕はありますよ。まず、1人だけプロフィール写真が自撮りで恥ずかしい(笑)。それは冗談として、プレイ面だと、たとえば僕が突破に成功すれば有利になる状況でも、少しでもリスクがありそうな場合は無理だと判断して、伝えてくれないところですかね。そこは言ってほしい場合もあります。

シチメンチョウ:
なるほど。そうですね。僕の場合は、無理して倒されるよりは、みんなで行こうという考えなので。これはもう自分のスタイルですね。

ニコチャン:
リスクを負うプレイより、できるだけ安全なほうを選択するのがシチメンチョウさんだと思います。逆に僕やイナバは、ここを勝てばチームとして一気に勝率が上がる、という考えに重点を置いています。その辺りで意見の食い違いが起きることもありました。しかし、意見は人それぞれなので、ちゃんと話し合いをして解決は出来ています。

Japanese小池:
あと、あいつめっちゃ生意気だよな(笑)。

イナバ:
生意気っすね(笑)。

シチメンチョウ:
途中から入ってきた身なのにすいませんでした!

――:では最後に、イナバさんに向けて。

シチメンチョウ:
自分の意見を持ってほしいですね。人のことを考え過ぎてしまう一面があって、味方がこうして欲しいだろうから、無理にでも自分はこうしなきゃ、っていう考えが強過ぎる。それも良い場面もありますが、もっと自分のことを考えても良いと思います。

ニコチャン:
シチメンチョウさんが言ったとおり、自分の意見を持つという部分。話し合いの際に、イナバは自分の意見を言わないので……。自分の中で意見を持っているのか、持っていないのか、そこは分かりませんが。やはり言ってくれたほうが、僕たちとしてはやりやすいかな。

あと、イナバは感度をコロコロ変えるクセがあって、そのせいで日によって調子の波が激しい。もう少し安定して欲しいですね。本当にイナバは強いときは強くて、チーム全体を引っ張ってくれるんですけど、感度を変えて失敗しているときは、う~ん……。

――:なんで感度を変更するんですか?

イナバ:
いや~、楽しくて止められないんですよね。低い感度から、高い感度に調整したときの視点移動の速さが気持ちよくて……。

――:イナバさんのキャラが大体掴めてきました(笑)。

 

リーグ序盤下位のスタートから大逆転の優勝 その舞台裏

――:従来のプレイヤーが上達するために必要なテクニックについて教えてくれますか。

ニコチャン:
やはり、ルールごとに対して理解力を深めることが大事です。たとえ、どれだけ個人能力が優れていても、ルールを理解していないとひとりでは絶対に勝てません。自分の成績は後回しにして、これをすればチームが楽になるという動きを、どんどん覚えて行き、それをチーム全体で実行すれば必然的に強くなります。

イナバ:
たとえば「ドミネーション」(※)の場合、まず相手はマップ中央にあるB旗に走ってくると思います。その場所を守る際、ここに居たら相手側はしんどいなという場所に陣取る。

「サーチ&デストロイ」なら足音が重要になるので、銃声を出したあとは今いる場所から真逆のほうに走って回り込むとか。そういう立ち回りの面が大切になってくると思います。

※:マップ内にある特定の旗エリアを占拠するモード。

シチメンチョウ:
プレイを続けていると、どんどん基本がおろそかになってしまう傾向があります。たとえば、身体を出さない、出す場合はその面積を少なくするなど。そういった基本を見返すことで、さらに上手くなれますので、実践してみてください。

――:ありがとうございます。“CoD:WWII プロ対抗戦”のグランドファイナルについても、お話を聞かせてください。リーグ序盤下位のスタートで辛酸を味わい、そこから這い上がって2位でグランドファイナルへ進出、決勝ではリーグ中1度も勝つことができなかったDetonatioN Gamingにストレート勝利で優勝を果たしました。なぜ、あの場面で勝利できたのでしょうか。

ニコチャン:
当時、僕たちは練習相手が2~3チームしかない状況で、グランドファイナルの対戦相手であるDetonatioN Gamingさんとも戦っていました。その際、極力自分たちの本当にしたい動きを見せずに、ほかの場所でもできるような練習をあえて優先させていたのです。

そして本番で、チームとしてやりたかった動きをバンッと見せるという戦術が、上手く決まったと思います。おそらくDetonatioN Gamingさんも同じことは考えていたと思いますが、こちらのほうが上回ったのかなと。

――:第二ゲームの「サーチ&デストロイ」では2ラウンド先取されてからの見事な逆転劇でしたが、その時の心境は。

“CoD:WWII プロ対抗戦” 第二ゲーム「サーチ&デストロイ」の試合模様
ニコチャン:
正直、先に2ラウンド取られたという記憶がないくらいです。あ、取られた~、よしやるぞ~! という感じで。

イナバ:
負けている感じは、まったくなかったですね。

シチメンチョウ:
逆に、相手の攻め方や守り方を知れたことが大きかったです。それなら、こちらは対処しようと気持ちをすぐに切り替えたことが、勝利した1つの要因だと思います。

ニコチャン:
最初の2ラウンドで、相手の行動をすべて見透かせました。3ラウンド以降は、ほぼその予想通りになり、相手の動きを9割型は把握している状態で戦うことができました。読み合いに勝ったとも言えますね。

あと、DetonatioN Gamingさん側は緊張が目立ったかなと。もちろん僕たちも緊張はしていましたが、バックルームではうちのほうが圧倒的にはしゃいていたし、試合前に円陣を組んで気合を入れたりとか。少しでも緊張を和らげることができていた、そういった差もプレイとして出てきたと思います。

試合直前、円陣を組んで気合を入れるLibalent Vertex(写真提供・引用元:オフィシャルレポート)© Libalent,Inc. All Rights Reserverd.

入場の際は、楽屋で急遽決まった独特のポーズを各々が披露し会場を沸かせた(写真提供・引用元:オフィシャルレポート)© Libalent,Inc. All Rights Reserverd.

――:半年に渡って行われた同大会ですが、どのようにモチベーションを維持されてきましたか?

ニコチャン:
僕の場合は、DAY2でDetonatioN Gamingさんに大差で負けてしまい、そのときに火が付いた感じはありました。「絶対ぶっ倒してやる!」と燃えたことが、僕の場合はモチベーションになったと思います。

シチメンチョウ:
僕はDAY2から参加しましたが、その時点で「ここ負けたらヤバいよ」という危険な場面でした。ですが、自信はあり「このチームを勝たせてやろう」と考えていましたね。僕の場合は、常に勝利を渇望しているので、モチベーションが途切れることはなかったですね。

イナバ:
全部言われて――。

――:その技はもう聞かない!(笑)

イナバ:
マジかー。そうですね、僕は勝っても負けても、僕自身が上手くなりたいという思いで、ひたすらモチベーションを上げてきました。

チームで手にした優勝トロフィー

――:最後の質問になります。将来の目標や夢、直近目指している大会について教えてください。

イナバ:
日本のトッププレイヤーにはなれたと思います。それでも、それはチームとしてトップになっただけで、イチプレイヤーとしては他のプロ選手となんら変わりないと思っています。トッププレイヤーのひとりになれるように、頑張りたいですね。たとえば、「アサルトライフルといえば、このプレイヤーだ!」と代名詞として言われるくらいまで。

シチメンチョウ:
チームはもちろん、個人としても世界一は取りたいです。自分の強さをみんなに知らしめたい。そのために海外で結果を残します。

ニコチャン:
今年の目標はCoD: BO4で世界に行き、勝利することです。今のところ、”Call of Duty World League Championship”で日本チームが残した成績が、”ルーザーズ”という一度負けた組同士の3回戦だったかな。つまり4回戦負け。最低でも、そこよりは上のラインに行き、日本の記録を更新したいですね。

目標としては、もっと良いところまで、日本の快挙と呼ばれるところまで行きたいです。

――:本日はありがとうございました!

大会当日、喜びと興奮に包まれて手にした優勝トロフィー。実は、まじまじと見るのは取材中のこの日が初めてだという。輝くトロフィーに自身の顔が反射して写らぬよう、ベストショットをうかがうニコチャン選手。

■E3NCOUNT選手にもメールでコメントをもらいました

――:チームメンバーの印象は。

E3NCOUNT:
ニコチャンは、練習などで厳しいのは確かですが、結果を出したり成長したときは、褒めてくれる素直な選手だと思います。イナバは、普段は大人しいのですが、たまにでるすっとんきょうな所が個人的にツボです。シチメンチョウが、振り返ってみると選手兼トレーニングコーチって感じがしますね!

――:CoDシリーズの魅力と最新作について。

E3NCOUNT:
僕は小学6年生のときにFPSを初めて遊んだのですが、その作品がCoDでした。それから、他のFPSタイトルを何作品かプレイしてみたのですが、他のFPSにはないスピード感や爽快感をくれるゲームだと思います。最新作は、過去シリーズの武器やマップが復活してて、懐かしい気持ちになりながらプレイさせてもらってます!

――:今後の目標について教えてください。

E3NCOUNT:
将来の夢は、幸せな家庭を持ちたいと思っています!

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結成半年で手にした日本一。そこに至るまでには、ライバルに幾多も敗れたり、スキルが伸び悩んだりと、辛酸をなめることもあったが、決して諦めずにチーム全体でモチベーションを維持し大会に臨んだ。誰一人欠けても、代わりを充てても実現できなかった、紛れもないLibalent Vertexというチーム全体で手にした優勝だろう。

周知のとおり、CoDシリーズは全世界で人気を博しているFPSゲーム。当然、海の向こうでは、同シリーズのesports大会が幾度も開催され、さらなる強豪が存在する。そう遠くない未来、海外大会という次なる“戦場”でLibalent Vertexが挑戦する姿を応援したい。

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記者プロフィール
長戸勲
ゲームやアニメ系の雑誌記事、ムック本の編集・執筆を始め、「ガジェット通信」「コロコロニュース」などで記者としても活動するフリーライター。写真撮影が好きで、構図にはこだわる。本人曰く「突出したものはないが、大体何でもできる」。

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