【水谷隼×けんつめし対談】クラロワがなくなったらどうする?(中編)

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水谷隼の強さの定義は「ミスの少なさ」
けんつめし:
卓球にもいろいろな技術とか戦術があると思うんですけど、試合で相手が仕掛けてくるパターンはどれくらいを想定しているんですか?
水谷:
うーん、例えばレシーブの場合だと、3つくらい予測してますかね。
卓球という球技は、基本的に長いボールが来るとチャンスなんです。なので、サービスは台の中で2バウンドするように出すのがセオリー。
そうすると、サービスのコースはかなり限定されるんです。もちろん例外はありますが。
けんつめし:
大体、右か左か真ん中か、長いか短いかみたいな感じで予測してると。
水谷:
あとはスピンがすごく難しいんですよ。
同じコースなのに回転はいろいろな方向のサービスが繰り出される。それを、経験と感覚で相手にとって嫌なところに返さなきゃいけない。
けんつめし:
ということは、「この場所にボールが来た時の展開を予測する」というよりかは、相手のクセなどから分析するって感じですか?
水谷:
そうですね。相手がどういうサービスが多いかというのと、どういうところに返球したら相手が打ちづらいのかを考えて動きます。
それを邪魔するのが回転。これは体験してみないとわからないと思うから、あとでちょっとやろうか。

対談後、水谷選手のサービスを体験するけんつめし選手。返球は明後日の方向へ……
けんつめし:
そのサービスの回転の種類って、強い選手、例えば水谷選手は他の人よりも多いんですか?
水谷:
僕の強みは、わかりやすく言うと人よりもミスが少ないこと。ミスしたら結局負けてしまうから、強い選手はとにかくミスが少なくて、なおかつ相手にミスさせるプレイが上手い人だと考えています。
いろいろな技術があるわけですが、基本的にはみんな同じような技が出来るんです。ただ、その中でも上手い下手があって、そこが強さの差となってくるところ。
強い選手は心技体のすべてが優秀でなければいけないので、トップ選手は読み合いが優れているし、技術レベルもすごく高いですし、もちろんメンタルも強い。そういった要素を総合して強くならないと勝てない世界で僕らは戦っていると思います。
けんつめし:
クラロワも各選手に得意デッキがあったりするんですけど、それって裏を返すと得意不得意があるということですね。
頂点を目指す経験が将来を輝かせる――
水谷:
僕がクラロワリーグを見たり、自分がプレイしていて思うのが、カードの性能ってバランス調整が行われるじゃないですか。
卓球は昔から変わらない基本的なルールがあって、だからこそフェアに戦えると思うんですけど、バランス調整で得意なデッキの能力が低下することもあるわけで、それについて選手としてはどう考えているのかなと……。
けんつめし:
それに関してはオールラウンダーだったら問題ないというのが結論ですね。あらゆるデッキに精通している人だったらバランス調整でジタバタしないと思います。
「前の環境だったら自分が最強だったのに」ということもあるかもしれないですけど、それは言い訳にしかすぎなくて、オールラウンダーになりきれていない自分が甘いんです。
ただ、1つのデッキを極めるということも大事なことではないですかね。その経験があれば、他のデッキや戦術も同じ時間をかければ極められると思うんです。やっぱり環境にうまく適応していけるかどうかが、プロ選手にとって求められるところですね。
バランス調整を含めて、決められたルールの元で戦って盛り上げるのが僕の使命だと思ってるので、そこに対する不満はありません。
水谷:
そうやって受け入れることができているのはいいことですね。
あと気になっているのが、将来のこと。
どんどん新しいゲームが出てくるなかで、今後クラロワがどうなっていくのかという不安みたいなのってある?
きっと、これから5年、10年と経ったときに、クラロワがなくなっていたり、もしくはまったく新しい「クラロワ2」になってたりするかもしれないじゃない?
けんつめし:
そうですね……、僕はこのゲームで頂点になれたら、他のどんな物事に対しても頂点を目指すことができると思うんですよ。
結果を出すことに対しての取り組みの経験値ってすごく大きい。なので、今は特に10年後とかは考えずに、目の前にある頂点を目指して登っているところです。
クラロワがずっと続いたとしても、頂点を目指そうとしてなかったらそれなりの人生で終わってしまう。目標を決めて絶対に成し遂げるということに可能性を感じているんです。
それに、個人的な考えとしては、自分がどんどん活躍することでeスポーツを盛り上げることができれば、クラロワもずっと続いていくのかなって思ってます。終わらせないぞっていうくらいの心意気でいますね。
水谷:
うん、それはとても大切な考え方だと思いますね。
そこで、「俺はあのゲームじゃないとダメなんだ」ってなっちゃうと未来がない。
けんつめし:
そうですよね。
まずはクラロワで多くの人を感動させたいですし、自分がどこまでいけるのかっていうのを知りたくて頑張っているんです。
プロとは後戻りできない覚悟をした者のこと
けんつめし:
僕はプロゲーマーとして2年目になるんですけど、水谷選手はプロになって2年目くらいの時はどういうことを考えていましたか?
水谷:
14歳でドイツへ卓球留学に行き、そこからは無我夢中で卓球に専念、海外のプロリーグで戦ってきました。
なので2年目というと15歳くらいの頃になるんですけど、やっぱりプロになるということは元には戻れないということ。けんつがその覚悟をしてプロになったことは素晴らしいことですよね。プロになるという決断が出来たということは、その道で生きていくという覚悟をしたということだと思うので。
ライバルが身近にたくさんいると思いますが、そこと差をつけるためには人と同じことをしていては絶対に上にはいけない。差をつけるコツを日々研究してほしいです。
そうしていれば、何かをきっかけに一気に伸びていくときがやってくる。
けんつめし:
水谷選手にもそういう一気に成長を感じたときがあったんですか?
水谷:
僕は留学をはじめて4ヵ月後くらいでしたね。
ドイツのリーグで結果を残して、世界選手権の日本代表にも史上最年少で選ばれました。それから3年でまた史上最年少で全日本選手権で優勝したんですけど、やっぱりドイツに留学しなかったらそういうことにはなってなかったと思います。プロの世界で揉まれてきたからこその結果ですね。
けんつに例えると、クラロワが強い国に行って何年間か修行してきたみたいな感じなんですけど、そういった誰もやってないことを経験したことで強くなれたんじゃないかなと思います。
いわばクラロワ留学ですね。そういえば、クラロワってどこが強いの?
けんつめし:
ヨーロッパとか中国ですかね……。
どの国にも化け物クラスの選手が数名いるって感じで、個人個人で見るとどの国にも強いひとがいます。それでいうと日本はレベルは高いほうだと思いますね。
あと、クラロワは全世界のプレイヤーとマッチングするので、遠征をしなくても海外の選手と対戦できるのはいいところだと感じます。実際、海外の上手い方と仲良くなって練習をすることはあるので、貴重な機会なので大切にしています。
(後編へ続く)
写真・大塚まり
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