全国レベルの部活と多忙なSEを経てプロゲーマーNietonoへ

【この記事は約9分で読めます】
存在すら知らなかったDetonatioN Gamingでプロゲーマーへ
――今でこそプロプレイヤーは増えましたけど、aMSaさんに次ぐ2人目のプロプレイヤーとしてDetonatioN Gamingに加入したとき、今後どうなっていくのか、もしくはどうしていきたいか考えたりしませんでしたか?
Nietono:
こうなっていくんだっていうビジョンのようなものは特になかったですね。プロゲーマー自体がスマブラに限らずそこまで多くなかったし、スマブラでは前例がaMSaさんしかいなかったこともあって、プロになったからって何するの? みたいな状態でした。
プロゲーマーになったところで、界隈のために何かしてあげられるかとか考えましたけど、そういうのもプロが背負っていくのかと言われると、そのときはよくわからなかった。もちろんチームのために結果を出さなければいけないということはある思うんですけど。
メリットもあれば「プロなのに弱い」みたいに叩かれるデメリットもありますよね。品行も多少は求められるだろうなとか、そのくらいは想像できましたけど、プロゲーマーとして何かをすることはイメージしにくかったですね。
界隈のために何か良いことはしようかなとは思ったんですけど、何をしたらいいかがわからなかったし、そもそもプロにならなくてもやってたなって感じですし。
不安も特になかったですね。
――実際になにか変わったことはなかったですか?
Nietono:
もともと界隈に関しては宅オフの文化があって、自分も主催をしていたので、そこは変わらず。練習もプロになったからといって特に変わらないんですよ。
本当に発言とかに気をつけるようになったくらいですかね。ただ、配信をする頻度は増えましたね。
――そもそもなんですけど、DetonatioN Gamingの存在ってご存知でしたか?
Nietono:
いや、まったく知らなかったですね。
あの当時、DetonatioN Gamingは「リーグ・オブ・レジェンド」(LoL)のチームがメインだったのですが、自分はLoL自体を知らなくて、でも何かすごいデカいチームらしい、すげーみたいな感じでいました。
――プロゲーミングチームに入るにあたって、家族の了承を得るみたいなことはなかったですか?
Nietono:
好きなことは好きにやっていいよって感じの親だったので、そういうのは全然なかったですね。
昔から言うことをあまり聞いてなかったので……。どうせ止めてもやるでしょ、みたいな。
ただ、犯罪だけはするなって言われてたのでそれは守っています。
あと、プロゲーマーになったら飯は食えるのか? とは聞かれましたけど、当時は兼業だったので仕事しながらやるからと伝えたら特に止められることもなく。
――今はプロゲーマー1本で活動していますよね。兼業だったのはいつのことですか?
Nitetono:
大学卒業後、2年間は兼業でした。DetonatioN Gamingに入ってからだと1年半くらいですかね。
――兼業時代はスケジュール的にしんどかったのでは?
Nietono:
しんどい時期はありましたね。
というよりは、スマブラ for Wii Uが出たばっかりで、しかも発売後から2年くらいはアップデートがかなりあったんですよ。しかも今より激しいアップデートだったので、その度に対策をする必要があって、それが結構頻繁やってくるんです。
なので、兼業をやってるときは、アップデートがくる度に時間が足りなくなってました。いろいろ変わってて対策しなきゃいけないし、ほとんどのキャラが修正がある中で、全部調べるのが間に合わないことが多くて、大会に向けての練習もやらないといけないですから、とにかく時間は足りませんでした。
しかも、その時の仕事がシステムエンジニアだったので、忙しいときはマジで忙しくて、終電帰りで朝も早いことが結構ありました。練習時間が足りなくて本当に苦しかったですね。
――その苦しい生活を経てフルタイムでプロゲーマーとしてやっていくことになると。それでやっていける手応えみたいなものがあったのでしょうか?
Nietono:
当時はそういう見込みはなかったですね。自分が勝てるというのは信じてましたけど、将来のことは何も考えてなかったです。
フルタイムになるときは、給料とかは置いておいて、お話をいただいたのでやってみるか、みたいな感じでした。いざとなったら貯金を崩せばいいやって思っていましたし。
高校時代は駅伝とスマブラを両立?
――宅オフに初めて行ったのはいつ頃ですか?
Nietono:
高校2年生のときですね。スマブラXが出た翌年です。
とはいえ、それから頻繁に通ったわけではなく、次に行けたのは高校3年生の冬。
もっと行きたかったんですけど、当時は福井県の高校に通っていて、なおかつ部活がすごい忙しかったんですよ。週1で休みがあるかどうかという全国レベルのガチガチの運動部だったので。休みがあっても月曜日だったので、週末で行われることが多い宅オフにはなかなか行けなかったんですよね。
――いわゆる強豪校だったんですね。そんな部活に入っていると、宅オフに行くのも大変そうです。
Nietono:
最初に行った宅オフのときも、テスト期間中の休日に部活の休みが重なったときがあって、たまたま宅オフが開催してる日だったんですよ。
Xのときはオンライン勢だったんですけど、オンラインの場合はラグがすごくて、本当の戦いはオフラインだろってずっと思っていました。
――大会にも出たい気持ちはあったんですね。
Nietono:
そうですね。今だと福井でも大会があったりしますけど、当時はなかったんです。
その後、部活を引退した3年の冬頃からは、福井で宅オフがあるときはほぼ行ってました。
高校卒業後は東京の大学に進学したんですけど、それもスマブラのために(笑)。そこからはもうオフ主催者ですね。
――ちなみに何部だったんですか?
Nietono:
陸上部で長距離をやってました。長距離走って1日休むとそれを取り戻すのに3日かかるって言われてて、なんなら休みの日も部活の本練習はなかったですけど朝練はやってました。
部活の休みが月曜日だったのも、病院に行けるからだったんですよ。体を痛めてたら整骨院に行けますし、他にも何かしらの病院に行けますし。自分の場合は花粉症と貧血だったので、2週間に1回花粉症の注射、2週間に1回貧血の注射を打ってたので、毎週何かしらの注射を打ってました。そんな感じのガッチガチの部活だったので、本当に休みがなかったんです。
そんな中、テスト期間でたまたま休みになったときに、宅オフに行けたのは思い出ですね。テスト期間だから勉強しろというのは置いておいて。
――それだけガチな部活だと、普段スマブラをプレイするのも大変ではなかったですか?
Nietono:
長距離をやってたせいか体力は結構あって、毎日プレイはしていましたよ。
1日のスケジュールとしては、朝の5:00には起きて、5:30くらいには家を出て朝練へ行き、帰りは大体21:00くらい。そこから風呂に入って飯食って22:00くらいになって、2~3時間くらいはずっとゲームしてましたね。
――そして、上京後は宅オフの主催者側になったんですね。
Nietono:
はい。行くより来てもらったほうが楽じゃないですか。
実際のところ掃除とかやることはあるんですけど、自分で開いた方が楽だしって当時は思ったし実際そうでした。
――東京のプレイヤーは福井のプレイヤーと比べて強かったですか?
Nietono:
うーん、プレイヤーのレベルの差はもちろんあったと思うんですけど、福井って実はかなり強い人がいたんですよ。大会でも結果を出していた人でした。
その人と対戦を繰り返しやっていたので、東京に来て露骨にレベル差を感じることはなかったです。もちろん全体的なレベルは東京の方が圧倒的に高いんですけどね。
――上京後は大会に参加する機会も増えたと思うのですが、大会に出だした頃の成績はどうでしたか?
Nietono:
実は上京する前の高校3年で部活を引退した直後くらいのときに、東京に遠征して大会に出たことがあるんですよ。その時は予選落ちの人たちで行われるBクラスのトーナメントで優勝しました。優勝と聞くと良い結果に聞こえますけど、実際は予選落ちです。
その次に出場したのが、上京して4ヵ月くらい経った2010年8月に出た当時の関東で一番大きな大会です。
その頃って今みたいに頻繁に大会があるわけじゃなくて、3~4ヵ月に1回くらいだったんですよ。その前は4月に大会があったんですけど、引っ越しの関係で出れなかったので、それまではひたすら宅オフで練習しまくってました。そのおかげか、今度は予選も突破して、最終的にはAクラスで準優勝。いきなり良い結果が出ちゃいました。
上京前の3ヵ月間くらいは宅オフで鍛えたのでその成果が出ましたね。
共同生活&宅オフで強くなる環境はバッチリ
――今はここスマ宿で共同生活をしながら宅オフを主催されています。ここに住み始めた経緯を教えてください。
Nietono:
去年の5月くらいにここに引っ越してきたんですけど、その前も蒲田でルームシェアしていました。
2LDKの物件に2人で住んでいたんですけど、追加で2人が住み着いちゃって、さすがに狭いってことで引っ越すことに。
あと、今は7人でこの物件に住んでいるんですけど、7人で毎日スマブラをやれば強くなれるとも思いました。新作のスタートダッシュが切りたかったんです。
広いので宅オフを開くのにも便利な家です。
――こういった宅オフから強いプレイヤーが生まれていくんですね……。今作からスマブラを始めたというプレイヤーもこれから大会で頭角を表してくるんですかね?
Nietono:
前作ではそこまで活躍してなかったけど今作で結果出してきてるなって人はちょこちょこいると思います。自分的にはそこらへんも注目しておきたいですけど、さらにまだ出てきてないプレイヤーも今後現れるでしょうね。
前作でも発売から1年で中堅くらいになって、もう1年かけて上位に入るって人が結構いたので。
――普段の配信で意識していることはありますか?
Nietono:
いやー、あんまり何かを見せようとかは思ってないんですけど、交流しようとは思ってるんですよね。配信って一番交流できる場だなって思ってて。
動画とかを見てても人柄ってわからないじゃないですか。配信は自分を知ってもらえる機会だと思ってるので、視聴者との交流を心がけています。なので、コメントも全部返していくのを目標にやってるんですけど、そこまでコメントが多くないので返せてますね。
――配信だとオンライン対戦がメインになってくると思うのですが、ラグがあって大会に向けた練習にはならないと聞きますがいかがでしょうか?
Nietono:
いやー練習になるかならないかと聞かれると、なるとは思っています。だけど、やっぱりオフと比べると得られる経験値が少なすぎます。感覚ではオフの10分の1くらいしか入ってこない。
なので自分がオンラインをやるのは、キャラを動かしたいとき、もしくは知らないキャラの知識を得て対策をするためですね。ただ、キャラ対策も、オフラインとは動きが全然違うので、真実を見誤らないようにしなきゃいけないんです。
でも、やらなきゃいけないんですよ。オフラインであまりいないキャラクターを相手にすることは、たとえ経験値が10分の1でも経験値を得ないといけない。そこは妥協せず追い求めています。
――本日は長い時間ありがとうございました。最後に、恒例の質問だけさせてください。大会前に食べる勝負メシは何ですか?
Nietono:
いやー、なんだろ……。強いて言うなら大会の当日は朝にinゼリー(※)とリポビタンDを飲みますね。
結構緊張するタイプなので、ご飯が食べられないんですよ。昔、大会のお昼ご飯に牛丼屋へ行ったんですけど、並盛りの半分くらいのやつすら完食できなくて(笑)。そういうのもあって、もう昼メシは食わないでおこうと考えているんですけど、何も腹にいれないのは嫌なので朝飯は食いたいんです。そういうときにちょうどいいので、inゼリーとリポビタンDを飲んでます。
験担ぎとかではなくて、緊張するからこれしか口にできないってだけなんですけどね。
※inゼリー:「10秒チャージ」でおなじみの「ウイダー in ゼリー」の現商品名。2018年3月の出荷分から商品名を「in ゼリー」としている
記事内でも触れているが、今回のインタビューはNietono選手らが普段生活しているスマ宿で実施。この日、スマ宿には、以前インタビュー記事を掲載したHIKARU選手の姿があった。
なんでも、スマッシュボール杯 スマブラSP 東日本リーグの第2期へ向けた練習をしていたようだ。
宅オフという文化で多くのプレイヤーが切磋琢磨しているだけに、日本勢のEVO 2019での活躍に期待せずにはいられない。
写真・Yumiko Mitsuhashi
【あわせて読みたい関連記事】
“スマブラの教科書”Nietono式成長のマインドセット
DetonatioN Gaming所属スマブラの教科書ことNietono選手。彼のキャラ選びの哲学や強くなるためのプロセスを紐解くインタビュー前編をお届け。