大会でもYouTubeでも1ランク上を狙うすいのこの戦略
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■前編記事
古参スマブラ―すいのこ プロ宣言の舞台裏
すいのこに足りないのはマクロな視点?
――プレイヤーとしてもう1段階、殻を破るにはどうすればいいと考えていますか?
すいのこ:
この間、keptくんとshkyくんと温泉に入りながらその話題になったんですよ。
今の勢力図では、一番上にザクレイ選手とかしゅーとん選手、かめめ選手、プロトバナム選手あたりがいて、その下にHIKARUくんやあばだんご選手がいる。HIKARUくんは最上位になりかけているところって感じですけど大体こんな感じです。
で、僕らはその下。ここから上にいく壁がとにかく高い。どうやって乗り越えられるかがマジで苦しい。基礎的な部分はある程度積み上がってきた感覚はあるんですけどね……。
僕は結構ミクロな視点から取り組んでいくタイプで、「これに対してはこうする」みたいな細かいところから詰めていくんですけど、それだけでは限界があるのかなって感じています。将棋の羽生さんの大局観みたいに試合全体をシンプルに捉えて、勝つとしたらこういう勝ち筋だよねっていうゴールから考えることも必要だと考え始めているところです。
――もう少し具体的に……。
すいのこ:
うーん、勝ち筋の考え方だったりとか、試合全体をコントロールするためにはどういう風に組み立てていくかという言語化が難しい部分にもっと取り組んでいかないといけないです。
あとは、相手にどうプレッシャーをかけていくかとか、どういう風に誘導するかとか、単純なセオリーにとどまらないことだと思っていて、そこを詰めていかないといけないという漠然とした課題感はあるんですけど、それに対して具体的にどう改善していくかというところはかなり手探り状態。
結局、1つずつ潰していくしかないのかなって思いつつ、ここから劇的に成長することはないのかな。一歩ずつ積み上げた先にあるものをイメージしていかないとダメだなと思ってます。
去年の4月から5月にかけてはそれなりに成長できつつあるなって実感はあったんですけど、ここから先は短い歩みを続けていく感じかなと。なかなかこのペースだと間に合わんなっていう焦りはありますね。少なくとも今より一歩上にいければ可能性は広がると思うので、今はそこを目標にしています。
上位勢って自分で決断するし、その判断に対して迷いとか後悔がない。すべての行動に何かしらの理由と自信がある。理由だけじゃなくて自信が伴ってるから力強く動くんですよ。そこは今の自分に足りてないところだと感じてます。
自信を持てるようになれるか。それが課題です。
X時代プレイヤーの大会事情
――そもそもの話になってしまうのですが本格的に大会に出だしたのはスマブラXの頃ですかね?
すいのこ:
そうですね。それまでは地元でやってたくらいだったんですけど、そんなに強くなかったんですよ。
続けていくうちにちょっとずつ勝てるようになってまた負けてを繰り返していった感じです。
――最初に大会に出たきっかけって覚えてますか?
すいのこ:
大会に出る前に、2ちゃんねるのタイマン専用スレッドでいろいろな人と対戦していたんですけど、そこにいたある人が「スマコム」(現在は閉鎖済み)というスマブラ版のmixiみたいなサイトがあるらしいっていうのを嗅ぎつけて登録してみたんですよ。そしたら、キャラ対策が載ってたり対戦募集ができたり、強いプレイヤーが日記みたいなので情報交換してたりして、スマブラのすべての情報が集まっていました。
そこで知り合った人から大阪で大会があるからと誘われて行ったのが初めての大会です。2008年の7月、僕が大学1年生の頃でした。それ以前にも宅オフには鹿児島の人がやってたところにちょいちょい行ってたんですけど、大会はそれが初。
そこで知り合った人とは今でも付き合いがありますね。
学生時代の夏休みは、その大会に誘ってくれた人の家に居候してずっとスマブラをやる生活をしていました。Xで強くなれたのはそのおかげかもしれないです。単純にひたすらやってましたから。
大学の人付き合いを捨ててスマブラをやってましたからね。3年生くらいまで大学には知り合いがほぼいなかったんですよ(笑)。あのときは楽しかったなー。
――共通の好きなゲームがあると付き合いも長くなりますね。
すいのこ:
僕の強みと言っていいのかわからないけど、その辺のつながりの広さは結構あるほうなんじゃないかな。YouTubeのオフレポの動画でもいろんな人と絡めるので。
YouTubeでは実力に寄与する動画作りを意識
――オフレポ動画、評判いいですよね。
すいのこ:
ありがたい話ですね。
しゅーとんとかが配信していると、「オフ会行ってみたいけど初めてだし……」みたいなコメントがちょいちょい来てるみたいで、僕のオフレポ動画見たら雰囲気わかるよって言ってくれてたようです。
もともとオフラインの独特の雰囲気を伝えるのが好きで、2010年に初めてアメリカに行ったときにすでにオフレポ動画作ってるんですよ。
人同士の掛け合いや盛り上がってる様子のような配信を見てるだけでは伝わらないものっていっぱいあると思うので、そこがちょっとでも伝えられたらなと。
――動画といえば、解説系の動画も好評ですよね。意外とやってる人が少ないのもあるとは思いますが。
すいのこ:
個人でも最近になってちょいちょい増えてきていますが、やっぱりどうしても手間暇かかるので、なかなか手がつけにくいのかな。やるとしても生放送を切り取って動画化するくらい。
僕が意識しているのは、YouTubeの活動も結果的に自分の実力アップにつながるものにしたいんですよね。それが解説動画だったんです。
――では、今出している動画は自分のためになっている?
すいのこ:
基本的にはそうですね。ただ、たまにおふざけ企画でもいいのかなとは思うんすけど(笑)。
――喋りの上手さというか、解説のわかりやすさも好評みたいです。
すいのこ:
1人で喋るのはマジで苦手なんですけどね……(笑)。人と喋るのは苦じゃないんですけど、配信のときとかは何の話題で場つなぎすればええんやって思いながらやってますよ。
コメントが流れてないときは苦痛でしょうがないですよ。何の話題を出そうかって。
――チャンネル登録者数も順調に増えています。
すいのこ:
徐々に見てくれている人が増えてうれしくはあるんですけど、かといって今のままだとマンネリ化するなとは思っているし、そもそもYouTubeでこのまま収益をもらい続けられるのかというのもわからないですよね。
YouTube活動もしているプレイヤーと話しているときにも、YouTubeだけを頼りにするのは結構怖いよねって話題も出たりしました。
マルチに活動していって、これがだめだったときにもまだこれがある、という逃げ場じゃないですけど、そういう第2、第3の道を作ったほうがより安定して収益を確保できるって話を聞いて、なるほどなーと思いました。
――最近、ザクレイ選手がついにYouTubeチャンネルを開設しました。
すいのこ:
やっぱりすごいっすよね。2、3日で登録者数が3万とかいってて。
やっぱりあれくらい結果を残して実力で認知度を増やすと、何よりも説得力がありますよね。自分も実力で知名度を伸ばしたいというのはあって、ずっとやってきた活動に最近は少し結果が伴って説得力がちょっとついてきたのかなっていうところなんですけど、まだ全然足りない。
いくら平日大会で上位になっても、それなりの大会で結果を残さないと評価されないし、実際JPR(※)も平日大会は考慮されないので、いかに大きな大会で結果出すかっていうのはすごく大事なんですよ。
平日大会で勝てるというのも1つの目安にはなりますけど、早くウメブラ開催してほしいなって思ってたらやっと発表されましたね。ウメブラで結果を出せるようにがんばっていきたいなーって思ってます。
※JPR:Japan Power Rankingsの略。大会の結果をもとにしたプレイヤーのランキング。2019年7月頃にSPのランキングが発表予定
――あ、最後に試合の前に食べる勝負メシを教えてください。スマブラ勢全員に聞いてるんですよ。
すいのこ:
勝負メシ?
うーん……試合前に口にしているわけじゃないので勝負メシではないとは思うんですけど、大会で負けちゃった後って観戦席の前の方で応援したり普通に観戦を楽しんだりしてるんですよ。
そういうときは隣になんちゃん選手がいることが多いんですけど、彼から「龍角散ののどすっきり飴」をもらって喉を保湿しながらやってて叫んでます。
すいません、こんなのしかなくて。龍角散で勘弁してください。
傍から見たら伸び盛りのように見えるが、実際のところかなり悩んで考えつくしてプレイヤー活動を続けているすいのこ選手。
そんな彼の目標は「2020年のEVOで壇上(ベスト8)に上がる」こと。
今から1年とちょっとでどれだけ成長できるのか。達成できるのか。ここまで読んでくれたあなたにもぜひ応援しほしい。
写真・大塚まり
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ウェルプレイドの社員兼プロゲーマーとして活躍するすいのこ選手。彼が選手として活動するに至った経緯を聞いてきた。