古参スマブラ―すいのこ プロ宣言の舞台裏

Mako(WPJ編集部)

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今回は、2008年から「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズ(以下、スマブラ)の競技シーンで活躍する古参プレイヤーのすいのこ選手へインタビューを実施。

ウェルプレイドの社員として仕事をしながらスマブラの大会に精力的に参加してきた彼だが、今年3月からはプレイヤーとしての活動に専念することに。その甲斐あってか、大会では上位に食い込むことが増え、YouTubeのチャンネル登録者数も順調に伸びてきている。

本稿では、プレイヤーとして専念することになった経緯から自身の成長のため思考など、プレイヤーとしてのすいのこ選手を中心に話を聞いてきた。

こどもリンクにした理由と使い続ける訳

――さっそくなんですが、スマブラのプレイヤーに専念するようになったのっていつ頃からですか?

すいのこ:
今年の3月からなので、もう4ヵ月くらい経ちます。時が経つのは早いっすね。

――割とすぐに大会で上位に入る頻度が多くなって、結果がついてきたように思いますがご自身的には手応えはありますか?

すいのこ:
うーん……、なんとかちょっとずつ結果が出てきたのかなとは思うんですけど、現時点でようやく前作の最後くらいの水準に届きかけたかなという感覚。ピークだったころに届きかけてるといった感じです。

ただ、危機感はありますね。危機感というか常に焦っているというか。

――というのは?

すいのこ:
今使っているこどもリンクは、正直なところキャラパワー的には最上位層と比べると今ひとつ。手の内がバレつつある現状の中、どうやって新しい引き出しを増やせるか、悪い部分をどうやって修正するかってずっと考えながらやってるんですよ。

今、たまたま結果が出てるからやった! っていう感覚は正直なくて、自分の中では上振れを引き続けられてるからなのかなって感覚でいます。いつかそれが崩れるときが絶対にくると思っていて、そうならないようにどうしたらいいか考え続けていますね。

平日大会の結果だけを見ると確かに調子は良いかもしれないですけど、自分の実感としてはまだまだ足りないし、このままだとやばい、どうしようみたいな感じです。

――そんな中でこどもリンクを使い続ける理由は?

すいのこ:
触ってて単純に一番おもしろいからかな……。使い始めたきっかけがそれなので。

面白いし、このキャラだったらそれなりに勝てるポジションにいけそうだなっていう予感もあったし、実際そのポテンシャルは感じているので、使う価値のあるキャラだと思ってます。

オフラインでこどもリンクをメインで使ってそこそこの立ち位置にいる人って本当にいなくて、切磋琢磨できる同キャラ使いがいないですけど、逆に自分のポジションを確立できるっていううまみもあったりするから頑張りたいと思っているんですけど。

前提として結果を残してなんぼの世界なので、そこを履き違えてはいけないからシビアに見ていかないといけない部分もあるかな。

――海外でもめずらしいキャラですよね。

すいのこ:
数は多くないんですけど、実は少数精鋭で強い人はいますよ。

海外のこどもリンク窓(※)に入っていて、動画を見せてアドバイスをもらったりとか、こういうテクニックがあるよみたいな情報交換をしたりとかしています。15人いるかいないかの人数なんですけど、全員何かしらのトーナメントで上位に残ってる人たちです。

とはいえ使っている人が少ないのは事実なので、対策を知ってる人と知らない人の差は激しいかもしれないです。ただ、そこに甘んじてしまうと普通に負ける結果になると思うので、そういう意味での危機感も持ってやっています。

※窓:同キャラ使い同士のグループのこと。主にDiscordで情報交換をしている

――Wii Uではディディーコングを使っていましたが、SPでこどもリンクにしたのはキャラ的にキツイところがあったからですか?

すいのこ:
そうですね、ちょっとパワー足りないなっていうのが率直な感想だったし、発売当初の性能として

  • 復帰が弱い
  • 差し合いで振れる技が少ない
  • バナナ頼りなのに他のキャラが着地やジャンプで速く動けるようになったから当てづらい

といった理由で、かなり向かい風なのは感じたので。

体験版で触った時点でなんとなくこいつあやしいなって雰囲気はあったし、そもそもいろんなキャラをフラットに触ろうと思っていました。

こどもリンクのコンボがヤバイって噂があって、実際に触ったらめっちゃ面白くて。コンボを極めることに楽しみを見いだせたし、大会でそれなりに勝てそうだなって予感もあったので使うことを決めた感じですね。

――アップデートでバランス調整がされてこどもリンクで勝てなくなってしまうリスクもあるのかなって思うのですがそのあたりはどう考えていますか? バランス調整が悩みの種になっているプレイヤーも結構いると聞きます。

すいのこ:
それはありますね。

とりあえずEVO 2019まではこどもリンク1本で頑張ろうと思ってるんですけど、その後はそういうことがあってもいいように、いろんなキャラ触ろうかなと。

こどもリンクという線は捨てないで他の可能性は考えていきたい。それこそディディーコングが使えるようになるかもしれないし、はたまた違うキャラかもしれない。

ただ、今のところ一番勝てるのがこどもリンクだから、EVOまでは1本でいきます。

ウメブラに出場できなくて感じたスマブラ愛

――話は変わりますが、先ほど話に出たすいのこさんのピークっていつ頃だったんですか?

すいのこ:
1年と少し前くらいかな。去年の3月から4月にかけてくらいが僕の中でのピーク。

――その頃は普通に仕事をしつつスマブラの大会に出たりしていた頃ですが。

すいのこ:
そうですね。その頃はまだスマブラに割く時間に余裕があってそれなりにやれてたし、大会にもいく余裕があって回数もこなしていたので結果が出ていたと思います。

――その後、仕事とプレイヤーの両立に悩む時期がやってくるんですね。

すいのこ:
最初のきっかけになったのは去年のEVOです。

当時は仕事もがんばってやっていこうって感じだったんですけど、EVOに行ったことでやっぱりスマブラって楽しいよなってすごく感じて、しかも新作(スマブラSP)がすでに発表されていて、もっとプレイヤーに比重を起きたいモヤモヤした気持ちが今思うとちょっとはあったのかなーって。

そして決定的だったのが、前作で最後のウメブラだった「ウメブラFINAL for WiiU」。

2018年12月1日、2日の2日間で開催されたんですけど、1日目に仕事が入ってしまって参加できなかったんです。どうしても人手が足りないということで、仕事だからしょうがないと思ったし、その仕事はやりきれてよかった。

そんなことがあって参加はできなかったんですけど、2日目に見学として行ったんですね。

もう会場全体がすごかった。参加してるみんなの魂と魂のぶつかり合いみたいになってて、勝って泣くし負けて泣く。誰が行っても感動するような舞台で、僕も号泣しちゃったんですよ。ボロンボロン泣きながら試合を見てた。

――泣きじゃくるすいのこさんは想像できる……。

すいのこ:
「最後あたったのがお前でよかった」みたいなやり取りもあったりしましたね。

ただ、僕がその輪の中に入れずに1人の傍観者として見ることしかできなかったのが結構しんどくて……。そのときに僕はまだプレイヤーとしてやりたいなーっていうのを本格的に思い始めました。

とりあえず話せる人に打ち明けてみて、もちろんアカホシさん(ウェルプレイド代表取締役CEO、谷田優也)にも相談しました。

そのときは、1ヵ月くらい長い休みをとってスマブラに打ち込んでみて、それで自分の気持ちがどう変化するかみたいなことを見ればいいんじゃない? ってアドバイスをもらいました。1ヵ月やって満足するのか、それでも飽き足りないとなるのか、それによってそうするかが変わってくるからって。

でも、SPが発売されたときは休みをとって3~4時間くらいの睡眠時間以外はずっとスマブラやっていたし、その後も仕事が終わったら速攻で家に帰ってスマブラをやる生活をしていて、年末年始もひたすらスマブラをやっていたので、もう1ヵ月打ち込んだところで満足しないのは明らかでしたね(笑)。

そうなってたのもすべてウメブラに参加できなかったからかもしれないです。あのとき普通にウメブラに出れていたら、もしかしたらこうはならなかった。ただのプレイヤーとして「あーよかった」で終わったかもしれない。あのときに行けなかったからこそ、自分が本当にやりたいことを考えられたのかなーって思います。


後編記事は、

  • 最上位プレイヤーとの差の埋め方
  • すいのこと大会の出会い
  • YouTubeの活動方針

のテーマでトークが展開。スマブラプレイヤーインタビュー恒例の勝負メシも聞いてきたが、その答えはちゃんとした食べ物ではなく……。

写真・大塚まり

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記者プロフィール
Mako(WPJ編集部)
スマホゲームの攻略サイト、情報メディアを渡り歩いてウェルプレイドジャーナルに流れ着いた超絶新進気鋭の若手編集者。イベント取材では物販やコスプレイヤーに釘付けになりがち。

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