ネモに聞いた転職、アミューズ、婚活までの話(後編):倉持由香のゲーマー交遊録【第5回】

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■前編記事
地元の友だちの親戚がスクエニに!しかもそれがあのプロデューサー!?
倉持:ネモさんが転職を決めたのは、どういった流れですか?
ネモ:
前の職場では10年間同じ部署にいて、お客さんとも良好な関係を築けてました。当時の上司もゲーマーとしての活動を理解してくれて、海外遠征へもある程度は行けるような環境でした。
ただ、30歳を超えると仕事を任される立場にもなるわけで、このままだと経験が足らないままになってしまうので、配属先の変更の話が出たんです。
そのときいた部署の居心地が良かったこともあって、それがすごい嫌で(笑)。もちろん、上司としては良かれと思ってでしょうが。経験アップという意味では、いっそ会社を変わってやるのもいいなと思って。
倉持:それで、スクエニへ行かれたんですね。
ネモ:
今は、柴さん(※)の元で働いています。これにはちょっと面白い話があるんですよ。
スクエニの入社前に、地元の友だちとスクエニの近所で花見をしたんです。そのときに、スクエニに転職が決まったことを話したら、友だちが「オレの親戚も働いてるよ」って、あるWikiのページを見せてきたんです。それが柴さん(笑)。
もともと、柴さんとは一緒に食事を行く仲ではあったんだけど、まさか地元の友だちの親戚だったとは!
※柴貴正氏。スクエニのプロデューサー。
倉持:すごい偶然ですね!!
ネモ:
スクエニの面接時に柴さんがいらしたので、この話をしました。そしたら、今から飲みに行くか! となって、3人で行きましたね(笑)。
倉持:世間は狭いなぁ~~。スクエニへ転職されてから、プロゲーマーとしては活動しやすくなりました?
ネモ:
はい。以前の職場の場合、海外大会へは行けて年に3、4回でしたが、スクエニへ転職して15回ぐらい行けてます(2018年)。そういう意味でも、活動はしやすくなったと感じています。
倉持:前回のインタビューはえいたくんだったんですが、えいたくんも「サヴァスロ」の仕事されてますよね。
ネモ:
そうだね。えいたは、社内の評判が良かった。イベントの集客も凄かったですし。もうえいたじゃなくて、えいた“さん”ですね(笑)。
倉持:やっぱりえいた“さん”なんだよなぁ……。そういう意味では、ネモさんはプロゲーマーに仕事を与える側でもあるんですね。
ネモ:
もちろんそうなんですけど、まだ自分に未経験の部分があるので、もっと仕事を覚えて適材適所で仕事を出していければいいと考えてます。
特にゲームの仕事は、出演する方にとって面白くないなと思われると苦痛な仕事になると思うんです。その逆のパターンもあって、面白いと思ってくれたら仕事に関係なくプレイしてくれる側面もあります。
これをうまくマッチングさせていきたいですね。
ザンギは嫌い!人生を無駄している気がするので
倉持:2018年のCapcom Pro Tourの感想はいかがですか?
ネモ:
出場できたのは良かったんですが、それで終わっちゃいましたね。本格的に海外を回ったのは今回が初めてでしたが、「専業プロゲーマーはきついな」と思いました。
移動という面でもそうなんですが、勝てないと辛い。勝てないと自信もつかないし、でもすぐ次の大会がやってくるし、ポイント取れなかったらとどうしよう……っていう。
倉持:良くないループですね……。Capcom Cupはいかがでしたか?
ネモ:
sakoさんとハイタニに負けちゃったんだけど、sakoさんとの試合には自信があったんですよ。僕の知らないsakoさんを見せつけられたって感じです。メナトのVトリガーはこれでしのげるだろうと思ってたら、sakoさんのテクニックはすごすぎました。
緊張して試合運びが悪かったわけではなかったんですが、結果3-0で負けてしまいましたね。試合前にsakoさんの動画を見て対策しておくべきだったと反省しました。
倉持:普段、練習部屋などでプレイしていて、このプレイヤーきついなという方はいますか?
ネモ:
今だと、ふ~どですね。
倉持:今ということは、ふ〜どバーディーですか?
ネモ:
もともと、ふ~どのレインボー・ミカ(以下、ミカ)に勝てないなと思ってたんです。そこで、コーリンを用意したんです。
倉持:確かに、最近頻繁にコーリンを使ってますよね。
ネモ:
ミカ対策でコーリンを使い始めたのに、ふ~どはバーディーを使い始めるという(笑)。でも、コーリンはすごく面白いキャラで、メインにしてもいいかなぐらいですね。
ユリアンとコーリンを比較すると、やっぱりユリアンのほうが強いので、大会ではこっちを使うことが多いと思いますが、コーリンはやってて面白いキャラです。
倉持:ふ~どバーディーには、コーリンを出すんですか?
ネモ:
いや、それにはユリアンです。今後、二転三転するとは思いますけど。大会ではかぶせがあるんじゃないかなと思います。
実際、ふ~どのミカにコーリンで勝てたことありますが、バーディーにはコーリンでは絶対勝てない。
倉持:バーディーは、今だとVトリガーIIが強いんですか?
ネモ:
そうだね。ふ~どの影響もあって、強いと言われ始めてるよね。通常技からチェーンを出したときに、そのままコンボに行けて、ダメージが400ぐらい出るんじゃないかな。火力がすごく高い。
倉持:ネモさんがバーディーを使うことは?
ネモ:
キャラ選びにこだわりがあるわけではないんだけど、バーディーはちょっと……(笑)。
シーズン1ではユリアンが追加されましたが、一番自分に合ってそうだなと思ってバルログを使ってました。ただ、シーズン2でバルログが強化されなかったので、強キャラのユリアンへ移行しました。
使ってて面白いことは重要なんですが、それと同じぐらいに勝てるキャラ選びの軸も重要です。
倉持:もしも、ザンギエフ(以下、ザンギ)がめちゃくちゃ強くなったら使いますか?
ネモ:
それはないかな。ザンギで勝つっていうのは、99秒間使うと思うんですよ。「ずっと小パンチで、近づいたらスクリューパイルドライバー」を繰り返してるというイメージがあるんです。
なので、時間を使うんですよね。人生を無駄にしてるなと(笑)。
倉持:ネモさんのザンギ嫌いはそういうことだったんですね……!!。
ネモ:
対戦してても、ムカつくし(笑)。
ザンギに代表される重量級キャラクターって、飛び道具に弱いっていうイメージがあるけど、逆じゃないかと思ってます。弾抜け技など、飛び道具に対する対処が他のキャラより優遇されてます。
バーディーもそうですし、ザンギやアビゲイルも当てはまります。そういう意味では、重量級キャラは恵まれてますね。でも、重量級キャラ使いの人は、「飛び道具キャラはきつい」って言い張る。本当は、おいしいと思ってるんじゃないかな(笑)。
倉持:そう言われてみると、板橋ザンギエフ(以下、板ザン)さんもガイルにアビゲイルで勝ってますね。メナトにも勝ってましたし。
板ザンさんとは、配信やツイッターでのプロレス的な絡みが好評ですよね。
ネモ:
いや、オレはまじでザンギエフが嫌いだから、事あるごとにツイッターなどでそういうことを投稿してたのよ。そしたらあるとき、板ザンから「さすがにこすり過ぎじゃないですか。あんまりやり過ぎると、面白くなくなるんで」って言われたんです。
オレとしては、こすり続けることでそれが定着して、やがてみんながそれを求めるみたいな流れを想像してたんですよ。ただ、この一件があったんで、僕はちょっと控えるようにしたんです。
そしたら、最近になって板ザン本人がこすり続けるようになるという事態に(笑)。
倉持:でも、ネモさんがザンギエフが嫌いってことは定着しましたよね(笑)。
遠征先で風邪を引いた竹内ジョンのやらかし
倉持:ストリートファイターリーグの3on3ではリーダーとして担当されてますが、ネモさんは教えるのは得意なほうですか?
ネモ:
教え方のスタイルは、課題を出してそれを順番にクリアしていってもらう形式ですね。この辺は、社会人での経験が生きてると思います。
ただ、自分では教えるのが上手いかどうかはわからないですね。
倉持:ネモさんから見て、教えるのが上手いと思うのは?
ネモ:
マゴかな。マゴはそれっぽいことをいうのが上手いんだよね(笑)。
彼は思ったことをすぐに口にできるタイプなので、ビギナークラスの人が質問してもポンポン回答が出る感じ。だから、安心感はあるんじゃないかな。
ただ、中には間違ってることがあるんだけど(笑)。
倉持:質問に対してすぐ回答が来るのは心強い! 頼れる! ってなります(笑)。
ネモ:
ビギナークラスだとそうなるよね。一方で、ふ~どはある意味「効率厨」なので、ビギナーには難しいんじゃないかな。
その分、ある一定以上のレベルの人には、ピンポイントで的確なアドバイスができるのでマッチすると思うんだよね。
倉持:確かに……。マゴしぃが一番優しく教えてくれそうでいいかな(笑)。同じアミューズ所属の竹内ジョンくんは、どんな方ですか? ツイッターを見るとネモさんがとても面倒を見ている印象です。
ネモ:
ジョンは大変だよね(笑)。すごい面倒見てるよ。ああ見えて、野心的な一面もあるし。でも、かなりぶっ飛んでるね(笑)。
倉持:ぶっ飛びエピソードは何かありますか?
ネモ:
香港の大会へ行ったときの話なんですけど、同じ部屋に泊まったんですよ。で、夜寝るときに「ちょっと寒いので、エアコンの温度を上げていいですか?」って聞いてきたのね。今何度の設定になってるのかを聞いたら、18℃っていうんですよ。
だったら、もっと上げていいよっていって寝たんです。それで、翌朝目が覚めたら部屋がすごく寒いんです。ジョンに結局何度に設定したのって聞いたら、「19℃です」って(笑)。なんで、香港で軽く風邪を引きました。
倉持:設定の変更が1℃って! 1℃じゃ誤差だよジョンくん!(笑)
ネモ:
台湾では、スマホが充電されてない事件がありました。ここでも同じ部屋で、夜オレが先に寝ることにしたんです。
ジョンくんが部屋の電気の消し方がわからなかったみたいで、最終的に部屋のカードキーを抜いて寝たみたいなんですね。
だから、翌朝起きてみたらスマホがまったく充電されてなくて。急いで会社に連絡を取る必要があったので、すごく困りました(笑)。
倉持:ジョンくんは天然なのかなぁ……。ネモさんは格ゲー界のご意見番的なポジションだと思うんですが、ズバッと発言するときにプレッシャーとかはないんですか?
ネモ:
何を言っても以前ほど炎上しなくなってきてるし、そういうのはないですね。なので、自分がムカついたことは、つぶやきます。好き嫌いもはっきりしているので。
ふ~どは効率厨だけど自分にない考えを持っている
倉持:好きなプレイヤーや尊敬するプレイヤーを3人挙げるとしたら、どなたですか?
ネモ:
好きなプレイヤーという観点だど、竹内ジョンですね。最近の若いプレイヤーの方には、ボコられるとそれで対戦会に来なくなることもあるんですが、ジョンくんはそれでも勝ちたいという気持ちが勝って挑んできます。
だから、彼からプロゲーマーになりたいっていう相談を受けたときも、親身になって考えましたね。負けて悔しいけど、勝つためにもっとがんばらないと! って精神じゃないとプロでは通用しないと思うんですよね。
去年ジョンくんは海外に20回以上行ったんだけど、Capcom Cupには出られなかった。でもそこで折れるんじゃなくて、今年はこうしようと決意して実行するのが重要なんです。
倉持:あと2人はどうですか?
ネモ:
ときどは好きなプレイヤーに入るね。ただ、ときどとはゲームだけの関係。これはお互いそう思ってるからね。
ときども、「(ネモさんは)ゲームはすごい。他の部分で見習う点はないけど」って、平然と言ってくるし(笑)。オレからしても、ときどのプライベートで見習うところはないんだけど。
お互い練習部屋にはちゃんと行くし、ゲームへの取り組み方も確固たるものがあるので、「ゲームだけの関係」においては、わかりあえてるというか。
倉持:ゲームを一番に考える2人にとって、「ゲームだけの関係」っていうのはある意味、一番強い絆ですよね。深い! あと1人は?
ネモ:
そうだね、尊敬するっていう意味では、ふ~どかな。
倉持:ウメさんかと思った。
ネモ:
ウメハラさんはこの業界を作ったという意味では尊敬に値するけど、プレイは尊敬しないもん(笑)。
さっきも言ったけど、ふ~どは効率厨なんだよね。だから、もっとこうすれば良くなるみたいな話を徹底的にできるのはすごい。自分にない考えも持っているし、参考になるよね。
街コン参加で再婚へ!?
倉持:最近、結婚されるプロゲーマーが増えてますが、ネモさんは再婚願望はありますか?
ネモ:
30歳になる頃には再婚を考えるようになったんですよ。これには理由があって、2020年の東京オリンピックが始まる頃には、物心ついた子供と一緒に見たいなと思ってたからなんです。
なんで、30歳ぐらいまでの間は、すごく婚活してました。
倉持:具体的にどんな婚活ですか? 婚活パーティーとか?
ネモ:
街コンに行ったりしましたね(笑)。ただ、結果はうまくいきませんでした。ただ、30歳からはプロゲーマーになりたいという願望が強くなって、そこからは婚活はしてませんね。
最近、甥っ子がうちに遊びに来たんですね。そのときに言われたひと言が、「ばぁばは、(ネモさんの)結婚をあきらめてるらしいよ」っていう報告でした(笑)。これじゃいかんなと。
倉持:最近だと、かずのこ選手もボンちゃん選手も結婚しましたし……。
ネモ:
そうだね。結婚してない組で考えると、ときど、マゴ、ウメハラ、オレかな。
倉持:ときどさんはなかなか結婚しなさそうだなぁ。マゴしぃは相手ができたらすぐしそう。今後のネモさんのキャリアプランは?
ネモ:
プロゲーマーを目指せるような環境づくりをしていきたいです。自分がプロに踏み切れなかった要因の1つに、「将来が不安だから」っていうのはあったし。そういったものも、解消していきたい。
今年はより一層、メディアでesportsが取り上げられるだろうから、説得力が増すように結果を残していきながら情報を発信していくことも大事だと考えてます。
倉持:今後のesports業界に望むことはありますか?
ネモ:
中身を知ってもらいたいですね。どうも、「esports」という言葉が先行している印象があって、実態と違うように思うんですよね。「このタイトルを真剣にプレイしている姿がカッコイイ」と思われないと、あまり魅力的なものにならないと思うんです。
このゲームはどんなものなのか? この選手はどういった人なのかを知ってほしいですね。
倉持:最後に2019年の目標と、ファンの方へメッセージをお願いします!
ネモ:
CPTで優勝ですね。プレミアでも勝って、自信をつけたいです。達成できるように練習もがんばるので、みなさん応援よろしくお願いします!
写真・大塚まり
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